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穏やかな氣持ちがもたらす

穏やかな氣持ちがもたらす

交配を丁寧にやったところと、少し手を抜いたところ。 着果の差を確かめようとしたけれど、正直なところ、よくわからなかった。 必死に花を減らして、精一杯の人工授粉をしたところでも、生理落果は起きた。 それなら——と、少し立ち止まって考えた。 穏やかな氣持ちで向き合えば、実は結ぶのではないか。 必死さは、何かを守っているようで、実は思考や身体を固くする。 畑に立っていると、ふと思う。 今ある技術の多くは、農家に「買わせるため」に設計されていないだろうか。 肥料。農薬。精製花粉をつくるための機材。 草を刈って土に還せば、肥料は要らない。 風と昆虫に任せれば、花粉も案外届く。 農薬は、大義名分があることも知っている。それでも、困難を極めながら無農薬を達成している方がいることも、事実だ。 不思議なのは、大量生産をするほど、病害虫が増えることだ。 工業化した途端に、待ったをかけられたかのような——そんな不自然さを感じる。 向こう10年、交配作業を続けるとして。 必死にやらなくていい、とは思わない。 ただ、穏やかな氣持ちで居ることが、きっと結実につながる。 ありの実はそれを、静

By shimbees
視点は、増えるほど静かになる

視点は、増えるほど静かになる

■ 畑から 幼果が、静かに数を増やしている。 枝の先に小さな緑の球が寄り添うように並び、花びらの名残をまだ頭に乗せている。葉は光の加減でグラデーションを帯び、縁はまるで鋸の刃のように細かくギザギザと立っている。 この景色ひとつに、着果数の多寡、摘果の判断、病害虫の有無の確認、葉の色と艶——無数の問いが宿っている。情報量とは、知識と経験の積み重ねによって飛躍的に増えるものだ。終わりがない。新たな概念を取り入れるたびに、見えるものが増え、問いが深まっていく。 ■ 在り方へ だからこそ、指標が要る。 何を見るか。何を残し、何を手放すか。それを自分の中に持っていなければ、情報の海に溺れ、目的地を見失う。 わたしはこの営みを「農的瞑想実践」と定義した。競争社会の速度には乗れない。それを選んだと言える。生命の循環に感謝し、祈りを捧げながら、没頭し、俯瞰し、浮かんだことをメモする。穏やかに、深く、在り続ける。 ひとつの考え方に過ぎない。受け入れられるとは思っていない。ただ、この在り方にしか嵌まれなかった。 さて、あなたの生活に活かせる視点はあっただろうか。 終わりがないこ

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梨の蕾が、ほどけていく。

梨の蕾が、ほどけていく。

畑に立つと、時間の流れ方が変わる。通常の仕事として向き合うと焦りしかない。 花が咲けば交配作業だが、当園は花粉精製の機材がない。 すなわち手作業で容器に花を摘み取り、成らせたい品種の花のめしべに異品種のおしべをつけて交配する。 よくまあこんなたわわに咲こうとしてくれたものだ。 花粉のためではないのだが、豊水は役立ってくれている。 わたしが言いたいのは、これで良いと決めることだ。 前述の花粉精製の機材があれば、ノウハウがあれば、迷わずそうするだろう。 状況が変わればやり方も変わる。 移行期間と割り切り今はこのやり方を選んでいるだけだ。 樹に念は通じると思っている。全体の開花を制限し養分を集中させる、蕾取りがある。これにより開花のタイミングをある程度揃えることができる。ただ、選択と集中のために人手が足りていればの話だ。 「できる限り応えていくからちょっと待って」この様な想いで園全体を周っている。 慌ただしいが充実している。 人間は利益追求のために、すなわち大きな果実収穫に向けて逆算して花を摘み取っている。が、樹は「さあ美しい花を見て」と語りかけてくれているとわたしは思う。 この

By shimbees
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